U.S.リールの最新機種、SuperCastrer.
その底力を検証してみた。

文:沢木好男

SuperCaster1000PRO

HIBDON 800 sx

今回ご紹介するのはアメリカンブランド、U.S.REELの最新ベイトリールSuperCasterシリーズである。このリールの最大の特長は、何といってもレベルワインドにアイレット(穴)がないことが挙げられる。まずはその形状を見てほしい。

写真はUSリールのスーパーキャスター1000ProとHIBDONスーパーキャスター800SXである。画像を見てお分かりの通り、レベルワインドに穴が無く、金属のバーが斜めに設置してある。これが回転することで、"シーソー"のような動きとなり、ラインを均一に巻き取る仕組みなのだ。これがいかに画期的で釣れるリールなのかを説明しよう。

レベルワインドにアイレットがないとバックラッシュが極端に少なくなる。

通常のベイトリールは、レベルワインドにアイレットと呼ばれる穴があり、それを通してラインを放出、巻きあげを行っている。アイレットがレベルワインド上で左右に動くことによってラインを均一に巻き取っているわけだが、これがキャスト時にはレベルワインド上のどこかの位置で停止してしまう。

キャスト時のラインは巻かれた通りに、スプール上で左右にぶれながらラインを放出するのだが、ラインがアイレットの真後ろに位置する時と、アイレットから離れた所に位置する時とでは、ラインの放出抵抗はおのずと異なってしまう。
穴とラインの位置が反対側になるとブレーキがかかり、バックラッシュにつながる。 穴によるライン抵抗がないためスムースにラインがでてバックラッシュしにくい。

この抵抗は看過できるほど小さなものではなく、アングラーはキャスト中には常にスプールの回転に気を付けていないと、即座にバックラッシュにつながってしまう。メカニカルブレーキを強めるとバックラッシュは防げるが、これはメカニカルブレーキによる抵抗が、アイレットによる抵抗を上回った場合にのみバックラッシュが防げるものであり、メカニカルブレーキを使って飛距離を稼ぐには相当のテクニックが要求される(不可能ではない)。

オールドタイプのリールによくあるように、キャスト時にもレベルワインドが動く構造のものであれば、キャスト中のサミングはそれほど必要ではなく、着水の瞬間にスプールを抑えれば、バックラッシュはほぼない。しかしメカニカルな動作が増えるため、スプールにかかる抵抗そのものが大きく、飛距離は最近のロープロフィールタイプほど伸びない。

レベルワインドからアイレットを排除することは、ロープロフィールタイプのベイトリールにおけるキャスト時の問題点をほぼ解決したといえる。アングラーはルアー着水時に少しだけ気を配るだけでバックラッシュはほぼなくなり、しかもアイレットという抵抗を排除することで飛距離は抜群に伸びる。

メカニカルブレーキを少し強めることで、着水時にスプールを親指で停止させなくても、最小のバックラッシュで済むほどである。しかもメカニカルブレーキを用いても、飛距離はそれほど落ちない。アイレットによる抵抗がないために最小限の使用で済むからだ。


なめらかに回転するチタンコートの「シーソー」

PEラインを用いても、バックラッシュが少ない。

ナイロンやフロロに比べて、PEラインにベイトキャスト時のバックラッシュが多いのは、慣性力によるものである。

ナイロンなどのモノフィラメントラインは、PEよりも比重が重い。同じ強度ならPEよりも太くなり、さらに重量は増す。この重量がキャスト時には慣性力となり、ラインそのものが前に進もうとする動きになる。ところがPEラインはそれ自体が軽く、しかも同じ強度ならモノフィラメントラインよりもはるかに細く、したがって重量はかなり軽い。

軽いPEラインは重いモノフィラよりもキャスト時の慣性力が弱く、ライン自体が前に進もうとする動きは弱いので、スプールよりも先に何らかの抵抗が少しでも存在していると、それを突破して先に進むことができず、あふれたラインがスプール上に溜まってしまう。これがPEラインにバックラッシュが多い原因である。

スーパーキャスターにはレベルワインドにアイレットがない。つまりスプールの先に抵抗となるものが存在しないのだ。PEラインのようにライン自体が前に進もうとする慣性力が少なくても、ラインはスムーズにスプールから放出されるため、モノフィラとほとんど変わらないレベルでキャストが可能となるのである。

これは非常に大きな可能性であり、バスフィッシングだけでなく、PE使用率の高いソルトの釣りにおいても、気兼ねなくベイトリールが使えることになる。

明らかにベイトタックルの方が有利と思えるシチュエーション、例えば港湾でのボートによるシーバスフィッシングや、細いPEラインを用いるタイラバフィッシングでのキャストによるナナメ引きなど、ベイトタックルの有効性は認識しながらも、PEライン使用によるバックラッシュの危険性からそれができなかった。

しかしアイレットのないスーパーキャスターならPEライン使用時でも、モノフィラメントラインと同じ感覚でベイトタックルが使える。また昨今流行りのタイテンヤ(一つテンヤ)においても、テンヤ重量の軽さから、フォール中の糸の出の悪さを気にしてスピニングタックルしか使えなかったのが、スーパーキャスターならライン放出時の抵抗が極端に少なくなるので、ベイトタックルでも対応できる可能性が出てきた。

これが何を意味するのか。より多く釣れるようになるということを示唆しているのだ。

アメリカのリールはそもそもドラグ性能に秀でている。
ましてアイレットがないとさらに良くなる。

アメリカのリールと聞いて即座に思い浮かべるイメージとはなんだろう。

大雑把な作り
重い
メンテは楽かも

かつては日本メーカーのお手本にもなったアメリカリールだが、現代では、どちらかというとネガティブなイメージを持たれる方が多いかもしれない。確かに日本製高級リールの精度は高く、釣法に応じた研究も盛んだ。しかし忘れてはならないことが一つある。それは「アメリカの魚はでかい」ということだ。

西海岸では数キロ沖で大型のマグロが釣れるし、東海岸ではヒラマサによく似た10kgを超えるブルーフィッシュが自由の女神の足元で釣れる。しかもより細いラインで大物を釣り上げることがよりステイタスにつながるという習慣があるため、アメリカのアングラーはドラグについては常に厳しい意見を持っている。アメリカの釣り具通販サイトでのユーザーレビューにも、否定的、肯定的意見に関わらず、ドラグに対する記載が多い。

したがってアメリカのリールメーカーは、ドラグ性能に関して神経質だ。実際ドラグがスムーズなのはアメリカンブランドの顕著な傾向で、100ドルに満たない格安リールであっても、ドラグの滑り始めに引っかかりがある物などは非常に少ない。

USリール社も、ドラグに関してはかなりの技術を持っている。スーパーキャスター1000Proには、ツインディスクドラグが採用されているし、HIBDON 800 SXにしてもドラグ性能は非常に良好だ。

実際に私も宮崎船長のルアー船セブンに乗って64cmのマダイをHIBDON 800 SXで釣りあげたが、PE0.6号、リーダー2号という細仕掛にもかかわらず、ガチンコファイトを試みても全く問題がなかった。64cmのマダイ相手にゴリゴリ巻いても、魚が暴れた瞬間だけ、ドラグが少しだけ滑り、細いラインを守ってくれた。

スーパーキャスターのドラグが動作する時の質感は、まるで粘度の高いグリースをゆっくりかき混ぜた時のような感じで、"ヌルッ"といった感触だ。これは滑り始めがスムーズであるだけでなく、魚が走りを停め、ドラグの動作が止まる時においても、スムーズに停止していることを意味する。

さらに、スーパーキャスターシリーズにはレベルワインドにアイレットが存在しない。これが何故ドラグの効きをさらに高めるのかというと、通常のベイトリールだとアイレットとラインの位置が反対に位置する時に、ラインにかかる抵抗が最も大きくなり、アイレットの真後ろのラインが位置する時、ラインにかかる抵抗が最も軽くなる。これがドラグによるライン放出時には、軽い抵抗と重い抵抗が交互に訪れることにより、"脈動"が発生する。

脈動は、ドラグ動作時に、スピニングリールのように「ズーーーー」という感じで一定の滑り出しではなく「ズン、ズン、ズン」という感じで、まるで心臓が速い鼓動を打つかのごとき、ムラのあるドラグの出方となる。

実はこのドラグの脈動が、バラシの大きな原因の一つとなっている。スーパーキャスターシリーズは、レベルワインドのアイレットを排除することにより、ドラグ滑り出し時の脈動が全く発生せず、バラシを低減することに貢献している。

これが意味するのは、より大きな魚が、より細いタックルで取れるようになるということ。さらにより細いラインの使用が可能ということは、より多くの魚をヒットさせるチャンスに恵まれるということなのである。

スーパーキャスターシリーズは、まさに釣るためのベイトキャスティングリールだ。レベルワインドからアイレットを取り除いたことは、バックラッシュの少なさというメリットだけにとどまらず、ベイトリールによるPEラインの楽な使用を可能とし、ドラグ性能を大幅に向上させるアドバンテージまでも獲得した。より多く、より大きな魚を釣るチャンスをアングラーに与えるために存在しているリールだといえるだろう。

最後に、先日スーパーキャスターを試していただいたルアー船セブン船長、宮崎晃氏のインプレッションをご紹介しよう。

フォール時の糸の出の悪さが解消されている。
巻きあげ時の回転抵抗が実に少ない。
フォール中のアタリが取り易い。
キャスト時のバックラッシュの少なさはかなり凄い。驚嘆に値する。
ドラグ性能が良い、したがってより細いラインが使用でき、釣果が増えるだろう。

800SXにギド・ヒブドンの名が冠されているように、アメリカではバサーの支持が厚いスーパーキャスターだが、もともと海での使用も前提にタフな仕様を採用している。

そのサイズ、ドラグ性能、フォールのスムーズさは、日本ではタイラバ・インチク、タイテンヤや、カワハギ、ライトタックルなどの分野でも注目を集めそうだ。そして、異次元ともいえるバックラッシュ防止性能は、何か新しい釣りの形まで描いてくれそうな可能性を感じさせる。国内初デビューとなるU.S.リールのスーパーキャスターに期待したい。